「ねぇ…。琉羽」と切り出した。
「ん?」と琉羽は雨哥を見る。
雨哥の表情で楽しい話題ではないと気付く。
「どうした?」
冷蔵庫から水を取り、一口飲んだ琉羽に切り出す。

「あのね、私、見ちゃったの」と…。
でも、苺美の家に行った時の事は言えなかった。
聞けなかった。それはどうしても…怖くて…。
「苺美と映画…行った?」と。
映画を見に行ったと思われる時の事だけ。
映画に行った事を聞くだけでも、こんなに怖い…。
終わりそうで怖い…。

「あの日、見ちゃったの…ビーズの材料を買いに行った帰りで、あの駅に私もいて…。それで…苺美の映画の半券を見付けて…日付と時間で…なんとなく…」
見たのは苺美の半券だけと言ってしまった。
胸が痛い。
自分だって、琉羽に本当の事、言わないくせに…。
こんな風に聞くなんて…。
『ごめんね』と心で何度も謝る。