「いいか?」とタキが2人に声を掛ける。
その手に、剃刀の刃が光る。
「琉羽/雨哥」
2人の声が重なり響く。
雨哥と琉羽の最後が今、決まる。
「雨哥から」とタキが雨哥の右手を握る。
その手は温かく優しい。
「タキさん」と雨哥が言うと、タキは雨哥の手の中に自分の親指を近付け握らせた。
「ゆっくり呼吸して」と雨哥に言い、同じように呼吸を整え合わせる。
「いい?」と言う目で雨哥を見る。
その目に雨哥は頷き、自分の右手首を見つめる。
剃刀の刃の光がスッと横に滑り、雨哥に一筋の線が入る。
痛いけど痛くない。
琉羽は冷静に雨哥の一筋を見守る。
「琉羽」の声の後、同じ空気と流れの中で、琉羽にも雨哥と同じ線が入る。
共通の一筋の線、切り口が2人に与えられた。
痛いけど温かく愛おしい同じ傷。
消したくないと二人は思ったんだ。
残しておこう。