俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました

鈴堂綾香(すずどうあやか)が到着してから、さんざん振り回され続けた音夜が逃げ込んだのは、美夜の部屋だった。


ごめんといいながら飛び込んで来た途端に、各方面に電話をし始める。

美夜は中抜けのため休憩中だ。

夕勤が遅いので、この休憩中に夕食の仕度を終えなければならない。
従業員用のキッチンで仕込をし、温めるだけにして冷蔵庫にしまっておく。美夜が洗濯物を取り込み部屋に戻ると、音夜はまだ電話をしていた。


取り込んだ洗濯物をたたみながら、音夜の苦悩を聞く。


「鈴堂側に連絡と、至急秘書を誰か一人と、運転手を寄越してくれ。宿泊すると言い張って、鈴堂の運転手を帰してしまったんだ。明日には帰したい。あいつの毒に耐えれそうな奴。第一秘書が空いてないなら……」


対策に追われ、頭を痛そうにする。
たしか夕食を作りに行く前は、父親と喧嘩をしていた。

仕事の調整のために各方面に連絡をして、音夜はやっと電話を終えた。


「大変そうだね……」

「大変なんてものじゃないよ。あの人話が通じないんだ。鈴堂とは祖父の時代からの付き合いがあるから、邪険にしすぎるのも良くなくて、とにかく関わらないようにしていたんだけど、最近は結婚すると言い出して」


音夜の腕に胸を押し付けていた彼女を思い出し、「かわいらしい方でしたね」とちょっと嫌味を言う。


「美夜まで勘弁してくれ。彼女、あれでも36だ。俺より年上だよ」

「うそ。すごく若々しかったのに……」


同い年くらいかと思ったのは全然違ったらしい。
びっくりすると、音夜は苦虫を嚙み潰した顔をする。


「あのぶりっ子で話聞いてない感じ、天然に見せかけてるけど計算だからね。ねちっこくてほんと怖い女なんだ。
昔は兄貴狙いだったんだけど、兄貴が結婚してから俺にターゲットを変えたのか、まとわりついてきてさ」

「それっていつくらいから?」

「あー…四、五年前かなぁ。それまでまったく見向きもしなかったのに。ストーカーみたいで、それが最近とくに酷くてね。職場にも家にも表れて、出張先にも表れた時には命の危機を感じたよ。それで、スケジュール非公開にして、ここの研修って名目でちょっと逃げていたのもあるんだ」


「あ、それで直前のお知らせになったのね」


星林亭に急に御曹司がくることになって大騒ぎになったのは、研修が始まる前夜だった。

音夜は申し訳なさそうにする。