俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました

自分語りをして、ナオの話を聞いて、関係各所に連絡を取っていたら空が白み始めた。


両家のご両親は探し回っていたらしく、警察経由で旅館に連絡が来た。

なんとかナオから、彼氏であり父親のトモに連絡とることができ、迎えに来て貰えることになった。

昼過ぎまでにはナオの両親と、トモが迎えに来る。
これでなんとか、もう一度話し合いが出来るだろう。
泣き疲れたナオは寝てしまった。


朝食勤務の係が動き出しており、引き継ぎをしてその場を離れた。

夜に起こされて寝不足そうな女将が、勤務を夕方からに変えてくれた。


「平日だし、そんなに混まないから大丈夫よ」



もうすぐ六時。
外はすっかり明るいし、朝風呂客もチラホラ。
七時からの朝食を予約した宿泊者は、もう起きて動き始めていた。



美夜は疲労困憊で夜尋の元へと帰った。

ゆっくりと部屋のドアをあけると、夜尋は音夜の腕枕で熟睡している。
音夜も作務衣姿のまま寝てしまっていた。


泣きわめく夜尋の宥めと寝かしつけは、初めてだったから大変だっただろう。
とっさにとはいえ、音夜の意見も聞かずに押しつけてしまい、今になってどう思われたかが怖くなった。

のらりくらりと曖昧な態度しか見せていないのに、都合のいい女だと思われただろうか。


狭い部屋。シングルの小さな布団。
そこにひっついて眠る二人に、愛おしさが募る。


「音夜……ありがとう……」

起こさないように、吐息だけで囁く。
音夜が夜尋を見てくれたから、安心してナオについていることができた。


それでも聞こえてしまったのか、音夜は「ん」と呻いてわずかに身じろぎをした。額にかかっていた栗色の髪の毛が布団に落ちたが、また寝息を立てる。

長いまつげが揺れるのを見て、好きで堪らないという気持ちに支配された。

この手をとったら、どうなってしまうのだろう。

三人で暮らすとなったら、きっと星林亭では働けなくなる。恩を返せなくなるのは嫌だった。