俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました

強く握られた拳に手を添える。


「ナオちゃんには、守りたいものがある?」


ナオは瞳を揺らして視線を上げた。


「話をしてくれたら、味方になれるかもしれない。だから教えてほしいの。間違ってたらごめんね、ナオちゃん、妊娠してないかな………?」


とたんにナオの瞳からぶわっと涙が溢れる。


「わ、わた、わたし……」


ナオは周りは全て敵のような目をした。
お腹に隠された宝物を守るように、両腕で抱えて体を縮めた。


「トモの赤ちゃんなの。トモは最初結婚しようって言ってくれたのに、お父さんがトモを殴って反対したの。トモは奥歯が折れたよ。顔も腫れた。
そうしたら今度はおろして欲しいって言い出した。

わたしもお父さんに叩かれて、お母さんにはなんでこんなことにって泣かれた。
なんでかな。妊娠って、悪いことかな。

嬉しいことじゃないのかな。だって、わたしとトモに赤ちゃんができたんだよ?
トモの親も、この先どうなるかわからないって、未来の話しかしないの。

上手くいかないとか後悔するとか。赤ちゃんは今ここにいるのに、みんながわかりもしない未来のために赤ちゃんを殺そうとするんだ」


身に覚えのある気持ちだった。

自分しか守れる人がいないと、 突き動かされる気持ちがよくわかる。


「わたしそんなの嫌! もうこの子と幸せになる夢を見ちゃったの。出会わなかった頃になんか戻れない。トモが味方になってくれないなら、わたし一人だって守ってみせるの……! ぜったいぜったい育てるんだから……!!」


わかるよと手を握ると、うわーんと子どものように泣きだした。

情緒が不安定で、ナオと赤ちゃんの体が気になった。


「ちゃんと話を聞くよ。わたしにも子供がいるの。だから気持ちはわかる。どうしたらいいのか、一緒に考えるよ……」


やっと話してくれたとほっとする。
警察には保護をしていることだけを連絡して、一晩話を聞いてあげよう。

後ろに立っていた音夜と目を合わせると、音夜は良くやったと頷いて合図した。