「あーおしゃかな」
「夜尋は魚好きなのか?」
うれしそうにした夜尋に、音夜が頭をなでた。
「おさかなしゅき。おにくもしゅき」
「何でも食べれて偉いな。野菜はどうだ?」
「たべれるよ。もうおにーちゃんなの。えらいのねー」
えへんと威張っているので、ピーマンを差し出した。
「お。じゃあこれもがんばろっか」
目の前に緑色がくると夜尋はふいと顔を背けた。
「めっなのー! にがーのー!」
「おにいちゃんだって言ったじゃない」
「これおやさいじゃないの。むしなの」
「野菜です。ピーマンです。ほら、ママも食べるよ」
食べて見せるがびくともしない。
しばらく攻防を繰り広げていると音夜が笑った。そこで美夜は新しい手法を思いつく。
「おーくんもママも食べるから、三人でいっせーのでぱっくんしよう」
「えっ?!」
「え?」
音夜がびっくりしているので、美夜は首を傾げた。
「……俺も食べるの……?」
音夜の顔が真剣になる。
「え、食べないの……?」
もしや。
「だって、めちゃくちゃ苦……」
「んんっ!!」
不都合な発言を咳払いで遮った。夜尋がもっと嫌いになってしまうからやめてほしい。
それにしてもピーマンが苦手な御曹司だなんて……なんでも完璧な男と思っていたが、意外と子供舌のようだ。
吹き出すのを我慢して宣言する。
「3人で一緒にぱっくんしましょーね?」
男二人は絶望的な顔をした。
その顔がまたそっくりで、切なさと嬉しさで胸がいっぱいになる。
体の奥が、むずむずとした。



