俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました

「まだそんなこと言ってるのか。ホテル代とかどうでもいいんだって。返そうとか思うな」

「あの、でも怒ってるよね」

「怒るでしょ。でもそれはホテルのことじゃない。俺、美夜に好きだって言ったよ!? お前も、俺なら安心できる、一緒にいると悲しいことがまぎれるって、応えてくれた! だから……」

「ちょ、ちょ、ちょっとまっ……っっ!!」

「なんだ」

「その話、い、いつ……」

「ホテルに入るまえ。入った後もだけど。合意だったはずだ。それなのに翌朝、行方知れずになられた俺の気持ちがわかるか! 

俺は、何か間違えたのかと思って焦ったし、事情があるのかもと考えて、ずっと連絡をまってた。とうとう待てなくなって連絡を取ろうとしたら、すでにいなくなっていた。

アパートも引き払って、やっと連絡先を手に入れてもスマホも解約済。会社に聞いても誰もなにも知らない。やっと心が通じたと信じていたのに、なんて仕打ちだと思ったよ」


あの時、携帯代も惜しかったし、山奥に籠るのだからいらないと思ってすぐに解約してしまった。
それに、いろいろリセットしたかった気持ちもある。

住み込みになるから、家電や雑貨は捨てて着の身着のまま。仕事で駆け回ったあの街にいるのが辛くて、夜逃げのように離れた。


「なんでわたしなの? 美才治さん、すごくモテてたじゃない」


他社の女性からも、かなりアプローチがあったと聞いている。


「俺はけっこう前から、ケバい武装して媚ずにシャカリキに働くお前が気に入ってたんだよ。けど美夜と話してると仕事のことばっかりで、ランチくらいしてもいいほど会っていたのに、まったく誘えるような雰囲気にならないし。美夜はいつも好戦的だから、俺もつい喧嘩腰になっちゃうし」


「――――う……」


なんかすごく恥ずかしいことを聞いている気がする。
耳をふさぐと耳たぶが熱を持っていた。


「こら。なんで塞ぐんだよ。これ、あの夜も伝えてるからな」


目が据わった音夜に、手を剝がされた。

両手を拘束されて、挙動不審になった。体中の感覚が手の平に集中したんじゃないかと思うほど、やけに感触を感じられた。