俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました

大きな鏡があった。

その大きさに、お金持ちは全身をチェックしないとダメなのかと肩を竦めつつ、自分の状態を確かめる。

指摘されていた顔は本当に酷い有様だった。
アイブロウは滲み、つけまつげは取れかけ、アイラインは見事に目をパンダにしている。
口紅が跡形もないのは、もしやキスで落ちたのか。

唇がはれぼったくて、すこし痺れている。
誰しもがうらやむ様なあの顔と、どれだけキスしたのだと思ったら、想像だけで恥ずかしくてたまらなくなった。

よくこんな顔の女を抱けたものだと感心する。

人生で、こんなに泣いたことはないと思うほど泣いたわけで、瞼も腫れてお気に入りの二重の線が消えかかっていた。

百貨店においてあるような、海外のハイブランドメーカーの化粧品が何種類もアメニティとしておいてあり、ここぞとばかりにふんだんに使って顔をマッサージした。

頭のてっぺんから熱いお湯を浴びると、冷静になってくる。

よく見れば全身キスマークだらけ。
胸の頂はじんじんするし、動くと股関節がきしむ。筋肉痛な気もするし、まだ足が震えている。



(―――――― 一晩でどれだけ致したんだわたし……)


滝行のようにシャワーを浴びながら呻いた。


記憶がなくなるほど飲んだのは初めてだった。
それにしても、音夜はどういうつもりだろう。

勢いで寝てしまったことに責任を感じて、付き合おうとしてくれているのだろうか。

口が悪くいけ好かない男ではあったが、仕事は真面目に取り組む人間だという評価があった。手を付けた仕事はやり遂げる。最後まで責任を全うする。
それは以前、音夜から聞いたことだ。

こうなった責任は、自暴自棄になった自分にある。
引く手数多であろう男に、好かれ選ばれる自信など皆無だ。
もともとお互いにそういった男女というくくりで接していない。

対象外。その一言に尽きる。

そんな女を、ご丁寧に朝までフルコースでお世話してくれるなんて。


(申し訳なさすぎる)


今の状況の尻ぬぐいをどうするべきかで、頭はいっぱいだった。