俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました

「コーヒー飲むだろ」


仕方なく起きることにしたらしい。あくびをしながら、慣れた様子で備え付きのキッチンへ向かう。
まるで、何度も利用したことあるようだ。


それにしてもなんだこれは。どういう状況だ。

お互いに前後不覚になるほど酔っぱらって、一夜の間違い。そんなドラマのような現実も、奇跡的にこの世には存在するだろう。
だから、そんな状況も納得しなくてはならない。


そこまでは想像できるが、この部屋はありえない。なぜその辺のビジネスホテルやラブホではないのか。

互いの給料でなんとかできるような部屋ではない。

それともMISAIJI(ミサイジ)グループの会社のトップ営業マンともなると、給料はけた違いということだろうか。
割り勘でも破産しそうだと急速に頭が冷える。


昨日は人生最大級のどん底に落ち、人生最大に荒れていた自覚がある。

居酒屋を2件飲み歩き、その後ふらっと入ったバーで、偶然、音夜に会ったんだ。

そこで同席をすると、泣いて絡み酒をした。
人生の終わりだと思えるほどショックな出来事は、音夜のせいではない。

それなのに、八つ当たりで理不尽に責めて、最低な酔っ払いだった。


――――断片しか覚えていないが。


しかし、いつもは冷たいことを言って突き放す音夜が、めずらしく話を聞いて、根気よくお前は悪くないと言い続けてくれたのは意外だった。

自分の周りに味方はいないと感じていた心境で、音夜の慰めは救いになった。

たとえそれが、適当にあしらうための言葉であっても。

だから、ついつい甘えて――――……


(ああ……何やってるんだろうわたし……)


やけ酒に巻き込んでしまったことを、謝らなければいけない。

まさか吐いてはいないよね。
とにかく、なんでこんな高そうなホテルに。犬猿の仲である自分との情事はもとより、酷い出費をさせてしまった。