俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました

現実から逃げたくて、クビになった足で夜の街を徘徊した。
浴びるように飲み続け、かろうじて歩ける程度の状態で3件目のバーへ行った。


そこで偶然音夜と会い、「お前、再開発の件で責任とって会社辞めたって本当か?」と聞かれ、堰をきったように泣いた。

そして唯一、話を聞き、信じるよと言ってくれた音夜に美夜は縋った。


「お前がそんなことするわけない」
「俺も状況調べてみるから」


たとえ、その場限りの言葉だったとしてもうれしかった。

泣いて甘えたら、頭を撫でてくれた。
その手を離したくなくて、一人になりたくないと訴えたら、音夜は朝まで一緒にいると言った。

そして縺れるように二人でホテルへ入り、一線をこえた。


「俺はさ……、お前の事けっこう気に入っていたよ。がんばってんの、知ってた」


音夜の声は、傷ついた心を癒すように体を包んだ。

美夜は閉じていた瞼を虚ろに開いた。

いつもは、会えば罵り合いしかしないライバルの気遣いの言葉に、落ち着かせたはずの涙が溢れる。


「ああ、また泣く。お前って案外泣き虫だったのな」


ため息混じりではあるが、声は優しい。
しかたがない奴だな。そんな風に受け止めてくれている気がした。

目尻に溜まった涙はこめかみを伝って垂直に流れ、肌触りの良いシーツに染みをつくった。
熱を帯びた指が涙の跡を辿る。


「っな、泣き虫なんかじゃっ…」


そう虚勢をはりながらもぼろぼろと泣く。堰を切った涙は止まらなかった。
弱みを見せたくないのに。

飲みすぎたお酒が、悲しみを助長させているのかも。そうでなければ、この男の前でこんな醜態を晒すはずなどない。