俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました

課長は、当時夫婦仲がうまくいってなく、ここ最近は帰宅を送らせていたそうだ。

それを浮気だと思った奥さんが調査を依頼した。
そして運悪く、調査期間に美夜と二人での食事が含まれていたということだ。

課長のプライベートの連絡先もしらないし、そのうち嫌疑は晴れると信じていた。

しかし、会社に怒鳴りこんだ奥さんが、飲んでいる最中の、二人の会話を録音したものを流してしまった。



『わたしもいつか、課長のような優しい方と結婚したいですね。奥様が羨ましいです』



そのセリフは、仕事の話から、家族の話をへと切り替わり、それを聞いていたときだったと思う。
嫌らしい気持ちなどなく、奥さんの愚痴を溢す上司へのおべっかでもあった。
いつか自分も幸せな家庭をという憧れも。

しかし、そんな風な言葉ととらえてくれる人などおらず、言い寄っている証拠と認められ、美夜は完全に社内での立場を失い、諭旨解雇となった。


辞令が出た日、誰にも信じてもらえないことがどうしようもなく悲しくて、そんな風になってしまった状況が情けなくて、家に帰りたくなくてふらふらと飲み歩いていた。



『一応貢献はしてくれていたからね。懲戒解雇じゃないことが温情だと思ってほしい』


頭の中は、人事からの最後通告がぐるぐると回っていた。

反論など元より、呆然とすることしかできなくて、自分の力のなさ、信用のなさ。いかに調子に乗っていたかが伺い知れた。

一人で突っ走るだけじゃだめだったんだ。人脈を固め、味方を作り信頼をもらうことも、働くうえでは大事だった。



売れるだけなら誰でもいい。自分の変わりはいくらでもいる。
ああ、課長がいつも言っていたのはこのことだったんだと、すべてを失ってから気が付いた。