「あの、やはりお詫びをして……!」
「いいや、君はこの件から外れてもらう。もう君のお詫びくらいで解決しないんだよ。
うちも美才治不動産の広告関係に名前を出してもらっていたのに、CMも、パンフレットも、それを今からすべて修正しなくてはいけない。うちにもだけど、美才治不動産にもかなりの損害がでるのがわからないかね」
部長に吐き捨てられ、ひゅっと喉が鳴った。
売り上げが入らないだけではない。
違約金が発生するかも。
事の重大さがようやくわかり、体が震えてくる。
「こればかりは君がいままで使った手法じゃどうにもならないよ」
「―――――手法?」
「今回の売主に、女を使って契約を迫ったらしいじゃないか」
部長は鼻で笑いながら、これ見よがしに大きな声で言った。
女を使うって、何をどうやって?
すぐに反論すべきなのに、口からでたのは空気だった。
声にならない。
あの契約は、気難しい地主に何度もアポをとって、やっともぎ取った案件だ。
「どうせいままでの契約も、体を使って取っていたんだろう」
空気が凍った。
周囲の音が消え、次に聞こえてきたのは好意的ではない囁きだけだった。
「やっぱりねぇ」
「あの噂本当だったんだ」
「うわーやば。最低じゃん」
「新人のくせに成績よすぎだと思ってたんだよな」
もともと部長には気に入られていなかった。
女にできるわけがないという目でいつも見られ、疎まれていたが、ありもしない事で非難されるのは違う。



