俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました

音夜はかろうじて取り繕っていた礼儀を拭い去ると、とたんに態度が偉そうになった。


「ふうん。MISAIJIグループが駅前の再開発に乗り出したって本当だったんですね。地域一体まとめて買い上げたいのに、他の同業者に横入でもっていかれたらたまんないですものね」


開発関係と聞き、言葉の裏側を読んでカマをかけると、音夜は目を細めた。


プロパティーのような中小企業は黙っていろ。
MISAIJIグループの案件に手を出すな。

暗にそういわれているのがわかって、つい知っているアピールをしてしまったが、どうも図星だったようだ。


「何の話?」


そこで互いの目に火花が散ったのは気のせいではなかったと思う。
その後、おおあたり不動産からの案件は当初の予定通り美才治不動産が手掛けたが、交渉の末、その中の1割だけ仕事を貰うことができた。

美夜としては結果的には負けであったが、プロパティーという会社としては新しいルート、新規事業への第一歩として大きな手ごたえになった。



志波音夜が因縁のライバルとなったのはそこからである。
狙った商談がブッキングするたびにバトルを繰り広げ、勝ち負けを繰り返した。

他社だというのに、会えば互いにけんか腰で、敬語など使うこともなく言葉の応酬を繰り返した。
勝っても負けても涼しい顔をしている志波音夜が憎たらしくてしかたがない。

一番腹が立つのは、契約をとっておいて、その後の重要書類には一切自分の名前を使わないことだ。
契約に同席はするらしいが、書類上の担当者は常に違う人の名前であった。
どれだけお高くとまっているのだ。

資格を持っているのだから、責任者として署名出来るはず。


(それさえちゃんとしていれば、もっと尊敬できるのになぁ)


それが、最後まで責任を取らないスタンスに感じて、美夜はどうも気に入らなかった。