俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました

「いいよ。今日は出かけなくちゃだから、また来週来てよ」

「ありがとうございます!」


自分も大当の名刺を貰うと、互いの手帳を出しスケジュールを擦り合わせた。
隣で聞いていた男は、やりとりを聞き逃すものかと鋭い視線を送っている。


大当(おおあたり)さん。わたしからのお願いも忘れないでくださいよ」

志波(しば)君には義理があるからそりゃあもちろん。でも一社専属になる気はないからね。1円でも坪単価あげてくれるところと交渉するさ。それに、ライバル会社がいた方が美才治(みさいじ)さんも張り切ってくれるでしょ」


美才治という名前にピクリと眉を動かした。

MISAIJI(ミサイジ) RIAL(リアル) ESTATE(エステート)
同業者からは気取った横文字の社名ではなく、美才治不動産と呼ばれている。

ようするにこの男は、美才治不動産の営業というわけだ。

MISAIJIグループには建設業の会社もあり、プロパティーと違って、自社で土地の買い取りから造成、建築までできる。アパート賃貸から都市開発まで行う業界最大手だ。

長年、不動産営業をしてきたであろうやり手の大当に、したたかに二社で価格競争をしてくれと言われ、美夜と男は事務所を追い出された。


「もう少しで紹介をもらえるはずだったのに、邪魔されるとはね」


外にでると男は美夜に嚙みついた。さっきまでの愛想はどうした。こっちだって他社の人間なんだけど。
雑談じゃなくて、商談だったかと内心舌をだす。

いいところで邪魔をしてしまったらしい。
どうも大当が、先客がいるわりには、美夜が事務所入るとすぐに声をかけてきたと思った。

悩んでいたところに、タイミングよく別の交渉相手が現れたと思ったのだろう。