不動産取引は、癖のある地主や経営者が年配の、個人経営の不動産との取引が多い。だから舐められないように使える武器は使い、見た目でも威嚇しておくべきだと思った。

社内では、こんなケバイ女に言い寄ってくる男もいないだろうし、社外では小娘と言われないようにしなくてはならない。



周囲への反発心。見返してやりたいというプライド。
そして、女性初抜擢の代名詞に背中をおされ、美夜は我武者羅にがんばった。

面談で、一番気概を感じたとの人事の評価を落とさないように。

自分が頑張って認められれば、次に入社する後輩たちの仕事にも選択肢が増える。

外回りばかりで、会社の同僚とランチを楽しむことも、終業後にOL合コンなるものを楽しむこともない。

呼ばれるのは、社内の形式的な歓送迎会など名前がつくもののみという状況は、自分の立場を孤独にしていったが、会社へは遊びに行っているわけではないと割り切って、気にしないようにしていた。



初めの半年はほぼ成果を出せなかったものの、知識を増やし感覚を掴むと、美夜の成績はぐんぐんのび、1年後には営業成績1位をとるまでとなった。

表彰をうけ、全従業員にみまもられる中表彰を受けたときに、やっと認められたのだと胸がじんわりとした。
自分は間違っていなかった。
頑張ってよかった。



そのまま勢いに乗ると、難攻不落な大地主との契約も勝ち取り、二年目も売り上げ一位をとった。