俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました

それから2週間後。


バタバタと準備をし、美夜は星林亭を辞めることとなった。

音夜はやはりどうしても仕事の都合がつかず、夜尋の涙にかなり後ろ髪を引かれる思いであったようだが、先に本社の仕事へと戻った。


夜尋には、「しかたない」「我慢しようね」じゃなくて、
「ママも早くパパに会いたい。早く会えるように準備がんばるね」
そんな風に伝えたら、なにか感じてくれたらしく、寂しそうにはするものの大泣きすることはなくなった。



人生二度目の退職。

もっと働きたいという気持ちが、なくなったわけではない。それでも、その気持ちより、三人で過ごす時間を優先させたいと思い直した。


それは音夜の母、千恵子が手放しで歓迎してくれたことも影響する。
父親の省吾も電話をくれて、温かい声で迎え入れてくれた。


前の会社、プロパティーの時と違うのは、仲間たちが美夜の存在を惜しんでくれたことだ。

花恵も女将も支配人も、みんなが抱きしめてくれた。

以前は上手く出来なかった人間関係を、今度は構築できていたのだと思える。四年前の失敗は辛かった。けれど、自分を成長させていた。



自室の整理が終わると、少ない荷物を持ち、夜尋の手を握った。


「さ、行こっか」

「しゅっぱちゅだよー」

「うん」


ゆっくりとフロントまで進む。
長い廊下を進んでいると、涙が滲む。人生の一部となっていた星林亭を、噛みしめながら歩いた。



フロント前のロビーへ行くと、みんなが集まっていた。

「美夜ちゃん、がんばってね」

「たまには遊びに来るんだぞ」


背中を押されながら建物を出る。
正面の車寄せには、音夜が迎えに来ていた。