俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました

――――言えなかった理由は、わたしが逃げたからだ。

一晩で逃げられた相手を探してますだなんて、言えるわけない。


「そういった事情があって、美夜を見つけてすぐ、ぽろっと零しちゃったんだよな」

「そうだったの?」


口をあんぐりあけると、音夜はバツが悪そうにした。


「仕事の電話をしていたのに、途中でお見合い話になるんだぞ。せっかく都会の喧騒から逃れてきたのに勘弁してほしくて、結婚相手は見つけたからって宣言しちゃったんだよな。

返事を貰ってないうちから悪かったけど、ぜったいイエスって言わせるつもりだったし。言わなくても離す気はなかったし」


ええと。
言わなくても離す気はないのは、ちょっと困るのでは。



「やっと音夜の相手を知ることができたのよ。見に来るに決まってるでしょ」

「わざわざ来なくても、そのうち連れて帰ったよ」

「久しぶりに星林亭にも挨拶に来たかったし、早く会いたかったのよ」


ゴクリと唾を飲み込んで、ゆっくりと思いをぶつけた。


「昔から音夜さんには、たくさん助けていただきました。仕事も尊敬でき、懐の深い人柄にも大変惹かれています。
息子……夜尋の件は、ご報告が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。順序を守れなかった事で、周囲には心配をかけてしまったことを反省しております。

二人での生活は楽なことばかりではありませんでしたが、音夜さんの子供を育てることができて、とても幸せな日々を過ごせてました」


ご両親に会ったら、話したいと思っていたことだ。伝えたかったことをぶつける。


「勇気が持てず、一度は逃げてしまったけれど、偶然にも再会することが出来て、やっぱり音夜さんと過ごすことが、わたしにとっての幸せなのだと気づきました。
音夜さんとの結婚を、許してください。お願いします」


人生で、これほど緊張したことがあっただろうか。

娘さんをくださいっていう時の、男の人の気持ちがわかった気がする。

深く下げた頭を戻すと、真っ直ぐにとんでくる視線から、瞳を逸らさないようにじっと見返した。

返事を待つ時間はきっと1分もなかったのに、永遠に感じられて、緊張はピークだった。

口をぎゅっと結んで待つ。