俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました

「堅くならないで、寛いで頂戴ね」

見送ったはずの音夜に、千恵子と秘書がプラスされ、美夜は借りた客室へと舞い戻ってきていた。


秘書は気を使ってか隣の部屋に居る。

従業員であるはずなのに、なぜかお茶とお茶請けを出され、茶卓を挟んで座っている。
滝のように流れる冷や汗が止まらない。

夜尋はぐずぐずと泣きながら、ひたすら音夜の胸にひっついていた。
泣き疲れて眠ってしまいそうだ。


――――わたしに、会いに来たと言っていた。それはどういう意味だろう。


目の前の千恵子からは、嫌な雰囲気は感じなかった。


「美夜、いきなり緊張させちゃってごめんな。実は、母さんは前から美夜のことを知っていて……」

「え?!」


身辺調査かと飛び上がる。


「あ……美夜を、というか、俺がずっと好きな相手がいるということを知っていたんだ」

「え?」


音夜は恥ずかしさを誤魔化すために、夜尋の髪をかき混ぜた。


「立場上、早く決まった相手を作れとか、家庭に入れとか言われることが多いわけ。お見合いも……少なくはなくて、そういった話がある度に、好きな女がいるからって断ってきたんだけど。

それって美夜だったから、紹介もできるわけがなく、時間ばかりすぎてさ。

周囲は人には言えない変わった性癖があるんじゃないかとか、不倫してるとか、遊び人だとか、言いたい放題だったんだよ」

「それは……なんというか……」


ご愁傷様です。


変わった性癖って、なんだろう。
SM好きとか?

鞭を持った音夜を想像して、思わずぶっと吹き出した。
すぐに「んんっ」と咳払いをして、慌てて笑いを引っ込める。


そこでにこにことしながら聞いていた千恵子が、口を挟んだ。


「そうなの。音夜ってば相手がどんな人かずっと口を割らないから。誰を好きなもいいんだけどね、やっぱり不倫だけはよくないじゃない? 

週刊誌とかにも狙われやすいから、スキャンダルにならないうちに、落ち着きなさいってずーっとお願いしていたのよ」