俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました

翌日。
音夜が研修を終えた最終日。

旅館に迎えが到着すると聞かされ、音夜は大泣きする夜尋を抱っこしながら正面玄関へと向かっていた。


「ぱぱぁ……めっなのー。いっちゃやー」


音夜の首にしがみ付く夜尋を見ながら、後ろから見送りの為についてゆく。罪悪感がひどい。

昨夜もたくさん泣いて、音夜から離れなかった。
音夜も自分も寝不足だった。


もう説得の言葉は出し尽くして、何を言えばいいのかわからない。
数日経てば落ち着いてくれるだろうか。

それとも、母親として折れるべきなんだろうか。


「夜尋くんがこんなに泣いてるの初めてみたわ」


お見送りでついてきた女将も、悲しそうに見た。


「うるさくしてしまってすみません」

「子供の泣き声をうるさいだなんて思わないわよ。一時的とはいえ、大好きな父親と離れるんですもの。泣いて当たり前だわ」

「……はい……」


「付いていくにしても、環境がかわるんだもの。色々な事を考えなくちゃで、難しいわよね。美夜ちゃんの旅館に対する気持ちもうれしいけど、こっちはなんとか都合つくんだから、思うように動いてくれていいからね。

仕事には代わりがいるって言ったら失礼かもしれないけれど、夜尋くんにとっての両親はあなたたち二人しかいなくて、代わりを務められる人はいないんだから。

わたしにはね、美才治さんが来たときから、美夜ちゃんがさらわれちゃうんじゃないかっていう予感があったのよ。
二人が関係を公表してくれてからも日があったんだし。覚悟はしていたわ。
だから全然、突然なんかじゃないの」


さながら、ウインクでもしそうなくらいの明るい調子で励まされて、じんわりと胸に温かいものが広がった。