ダメな私は失声症の君と同居する

されるがままに着いてきた先は,1棟のアパートだった。
「アパート……?」
「ぼくの家。」
と手話で言われる。
誘拐じゃ……無いよな。
流石にこんな可愛くないの誘拐しないか。
「お邪魔しまーす……。」
彼は一人暮らしなのか,家には誰もいなかった。
紅比(あかび)……さん?」
表札に目を向け,私はそう呟いた。
「あかびしょう。」
(しょう)……。」
「君は?」
「来栖 澪。」
私が名前を告げると,祥はふわっと微笑んだ。
「いい名前。」