「そ、それは…」


「ほんとは死ぬ勇気なんて
ないんでしょー?
こっち戻っておいでって。
んで、本当に死にたいなら
こんなとこから飛び降りるんじゃなくて
誰にも迷惑かけないとこで死にな。」


言葉の終わりと同時に
柵にたどり着いた私は
彼に向かって手を伸ばす。


ふるふると体を震わせ、
目を潤ませる彼は
残念そうに、でも少しほっとしたように
私の手を掴み、こちら側へと
戻ってきた。


すると、へなへなと
柵に体を預ける形で
倒れ込んだ彼。


私はその隣に腰を下ろし、


「…死にたかった?」


シンプルな質問を、投げかけた。


それに対して彼は
何を言わずにただゆっくりと
首を縦に振った。