高校2年、春。
私、水瀬星(みなせ ひかり)は
誰もいない屋上にやってきた。


…はずだったのに。


「ねぇ、何してんの?」


私が声を向けたのは
落下防止用の柵より向こう側に立って
今にも自殺しようとしているように見える
同級生、橋本冬夜(はしもと とうや)だ。


彼は確実に私の存在に気付いているのに
返事をしようとはしない。


だから、


「何してんの?って聞いてるんだけど?
聞こえてるよねー?」


さっきよりも
少し大きめの声でそう問いかけると


「み、見て分かるだろ…っ
こ、ここから
と、飛び降りようと…」


「そんな足と声ガタガタ震わせて、
飛び降りれんのー?」


私は1歩ずつ、彼に近寄りながら
問いかけ続ける。