自転車に乗せてもらうこともなければ、自転車を貸してくれる人もいない。
ポケットに手を突っ込みながら走ると、シャンシャンシャンとかすかに音が聞こえてくる。
手のひらには柔らかなものをつかんでいて、時々手の甲に、硬いリングがぶつかる。
日付が変わる前に目的地に到着すると、ポケットからそっとキーホルダーを取り出して、リング部分をポストにひっかける。
リングの先からゆらゆらと揺れるマスコットをチョンとつつくと、シャラランと鈴の音が静かな住宅街をさっと渡っていく。

独りで何やってんだって、自分の未練がましい行動に笑えてくる。
だけどこんな一人ぼっちのクリスマスを、俺はかれこれ八回ほど繰り返している。

そんな俺を「イタい」とか「キモイ」とか「こわい」とか言う奴もいる。
そりゃあ俺だって坂井さん本人に「もうやめて」とか「別れて」と言われたら潔く身を引く。
だけど、坂井さんからはこの八年間、何もない。
「もうやめてほしい」も、「今年もありがとう」も。
坂井さんとの関係がこれまで通りかと言われたら、そこはもう現実を受け止めるけど、はっきり別れたわけでもない。
ひっかけた歴代のキーホルダーたちがどうなったのかはわからないけど、坂井さんから何か反応があるまで、俺は送り続けようと思っている。
一年に一回だし。

こういうの、だめかな?