「よかったらおいでよ」と誘われて、俺は気軽な感じで彼についていった。
そこには俺みたいな高校生は一人もいなかった。
外国人講師には留学生が多いとは聞いていたけど、その出で立ちは学生には見えない。
カフェ店員として働くたった一人の日本人スタッフは、ポロシャツに黒のパンツ、そこにカフェエプロンというなんともシンプルでラフな服装で、見た目は若いけれど落ち着いた雰囲気の男性だった。
その人がここの店長であり、この店を立ち上げた人だということは、後から知った。
時々外国人講師たちとスマートに会話をしている姿が、俺にはまぶしく見えた。

「よかったらどう?」なんて、俺をテーブルに手招いてくれたけど、俺は五教科の中でも、英語はとんとダメだった。
落第点を取るほどではないし、それなりに点は取ってるけど、話すなんて到底無理だ。
だって俺たちが学校で習得しているのは、受験のための英語なんだから。
それに英語を話す自分なんて、何か想像しただけでむずがゆい。
英語の授業の会話練習だって、テキトーにやり過ごしている。