あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう


「女の人……?」

私の言葉をそのまま繰り返して、雄太さんは心底不思議そうに首をかしげた。

「来てないけど……どうして?」

どうしてって……聞き返されて、顔に血が上ったけれど、ここを確認しなくては、先に進めない。

「だって、この服……」

女物でしょ?

言葉にはできなかったけれど、言いたい事は、きっと伝わったと思う。

「ああ……それは…………」

意を決して踏み込んだ私の質問に、雄太さんが言い淀み、不自然な間が開く。


聞きたいけれど、聞きたくない答えが出てくるかもしれない。


ドキドキして待つ手のひらに汗が滲んで、私はつかんでいたスカートを離す。

この服の感じからして、お母さんの、ではない。

そもそも、お線香をあげに来ただけの人間が、ここに着替えを置いていくはずがないし。


チラ、と目を上げてうかがうと、雄太さんはちょっと困ったような、切なげな瞳を私に向けていた。

「それはね…………加奈子さんの、なんだ」