あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう


「違う違う!あはは……今の、美也子さんにそっくりだったから」

今の、が何を指すのか分からなくて、私が不安と不満に眉を寄せると、雄太さんは引き出しを閉め、テーブルに戻って来た。

「美也子さんもさ、いつもそう言ってくれるんだよ。突然来たんだからいいのよ、おかまいなくって」
「え……お母さん、ここに来てるんですか?」

知らなかった事実に、思わず聞き返すと、雄太さんはごく普通のトーンで短く付け加える。

「うん、時々……今年は、まだ2、3回だけどね」

そんなに…………どうして?

驚きと疑問に言葉を失う私に、雄太さんは私を安心させるような、穏やかな微笑みを浮かべた。

「お線香をあげに、時々、来てくれてるんだ、加奈子さんにね」
「……そうなん……ですか……」

ぐっと、膝のあたりに置いていた手を握り締めると、借り物のスカートにシワが寄った。