あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう


「それじゃ、また遊びに来ちゃおうかな」

冗談めかしてそう言うと、雄太さんは大きく笑って頷いた。

「いいよ」

やった!と言いそうになったのを押さえて、お礼を言うと、雄太さんは何か思い出したように、椅子を揺らして立ち上がった。

「ああ、何も出さなくてごめんね!」

すぐ後ろのキッチンカウンターの向こう側に入った雄太さんは、奥の棚をガサゴソしながら言う。

「お茶菓子とか出してあげたいんだけど、あんまり食べないもんだから置いてなくて……男の一人暮らしだと、こういう時にダメだよね」
「あっ、いえ!突然来たんだから、気にしないで」

おかまいなく、と言うと、雄太さんはありがとう、と言った後で、クスッと笑った。

「沙良ちゃんは、お母さんに似てきたね」
「えっ?!おばさんっぽいってこと?!」

ショックのあまり大声を出すと、雄太さんはおかしそうにお腹を押さえて笑い出した。