あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう


「そう、ですかね……」

答えてから、それもそうか、と思い直す。

前に会った時には、まだ中学生だった。

あれから変わっていて当然だし、自分でも変わっている自覚はある。

「うん、一瞬…………本当に誰かと思ったよ」

苦笑する感じで言って、視線を落とした雄太さんは、飲み物を入れたグラスを2つ、コトンとテーブルに置いた。

その指先を目で追うと、どうぞ、と向かい側の席を勧められる。

「紗良ちゃんがこんなに大きくなったんだから、僕も年取るはずだよね」

「そんなこと……」

思わず出ちゃった声のボリュームが、自分で思ったよりも大きくて、慌てて声を落とした。

「そんなこと、ないです」

大通りから少し離れた場所にあるこの家は、とても静かで……私の心臓の音まで聞こえてしまいそう。

「雄太さん、は、全然変わってなくて……逆にびっくりしました」