だって、先輩と私はたまたま数年ぶりに会っただけで、学生時代は委員会くらいでしか関わりがなかったはずなのに。

そう訊ねると、『私は恋する人の味方でありたいの』と綺麗な顔で微笑まれた。

『それに、まだモタモタしてる麻生くんに意地悪もしたいし』
『意地悪?』
『ふふっ、意地悪っていうか、意趣返し?』

あまり穏やかではない単語が出てきて、ますます混乱してしまった。

怜士と別れた理由は知らないけれど、もしかして恨みでも持っているんだろうか。

『政略結婚をしたくないって気持ちは、私もよくわかる。だからね、霧崎さんにも素敵な恋愛をしてほしいなって思うの』

なにか企んでいそうな気配はするものの、彼女から悪意は感じられない。

結局、私のためにそう言ってくれる彩佳先輩に押し切られ、私は大内さんに会ってみることになった。

約束はお昼前の十一時半。ランチを食べながらお互いのことを話せば初対面でも気詰まりではないだろうというのは先輩の案だった。

それなら三人で会いましょうと提案したのに、「休日は家族と過ごしたいの」と素気なく断られた。

強引でマイペースなのにどこか憎めないのは、いかにも良家のお嬢様っぽいと思う。