まるで童話の中の王子様がお姫様にするような仕草に、ドキンと鼓動が跳ね、思わず「あ……っ」と甘い声が漏れた。

「頼むから、この状態で煽ってくんな。可愛すぎて、今すぐ陽菜が欲しくなる」

愛情と情欲をぐつぐつと煮詰めたような過剰に色香を纏った声音で囁かれ、私までぞくりと背筋に痺れが走った。

私が息を詰めたのがわかったのか、怜士が肩を竦める。

「大丈夫。我慢するから」
「そうじゃなくて。煽らないでほしいのは、こっちも同じなんだけど。無駄にドキドキさせないで……」

結婚して子供を授かった今でも、こうして甘い空気になると胸がひとりでに高鳴り、恥ずかしさに頬が熱くなる。

蚊の鳴くような声で懇願すると、彼は意地悪く片側の口角を上げながら私の瞳の奥を探るように見つめてきた。

「へぇ、ドキドキしてるんだ?」

ぐっと距離を詰めてくる怜士の表情は完全に私をからかう気満々の顔つきで、悔しくて眉間に皺を寄せると、可笑しそうに「ククッ」と喉で笑った。

「これから一年は禁欲生活なんだ。陽菜をからかって遊ぶくらい、許してくれてもいいだろ?」
「そっ、それとこれとは話が別じゃ……」