「今まで気付かなくて悪かった。頻繁にかかってくる電話だって、やっぱり嫌だったよな」
「……うん。昨日まではもやもやしてた。でももう大丈夫。私も今日ちょっと言い返しちゃったし」
「言い返した? なんて?」

あの時、ふたりが何を話していたのかは聞こえなかった。

気になって内容を聞いたが、陽菜は笑って「内緒」と人差し指を口に立てる。

今は笑ってくれているが、妊娠中とはいえ、倒れるほどのストレスなんて相当だ。

二度と陽菜を不安にさせないためにも、一度池田ときちんと話をした方がいいのかもしれない。

「それよりワークショップは? まだ仕事が残ってるんじゃない? 私はもう大丈夫だから」
「大事な妻が倒れたのに、仕事なんてしてる場合じゃない」
「そんな……」
「指示は出してきたし、基本明日も今日と同じだから、簡単な片付けと準備だけでやることも少ない」

だから大丈夫だと話すと、陽菜はホッとしたように息を吐いた。

自分がこうして倒れてしまったというのに、俺の仕事を考えてくれる陽菜に胸が熱くなる。