学習することを『たのしくない』と言っている子を目の前にして、『だから何?』と言ってしまえる彼女に、怜士の隣を譲りたくない。

私は私のやり方で、怜士の夢をサポートする。

『俺は陽菜が役に立つから結婚したわけじゃないし、妻なら夫の役に立つべきだと思ってるわけじゃない。陽菜が好きだから結婚したし、そばにいてくれるから頑張れるんだ。役に立つとか立たないとか、そんなの関係ない』

いつかの怜士の言葉が脳裏をよぎる。

そうだ、彼はずっとそう言ってくれていた。

だったら信じよう。そばにいるだけで彼の力になれる自分を。

「小学生の頃……? あなたたち、政略結婚なんじゃ……」
「いいえ。周りがどう言おうと、私たちは恋愛結婚です」

怪訝そうな顔をする池田さんに、私は胸を張って言い返した。

「怜士は絶対に渡しません。彼は私の初恋の相手ですから。それと、教育に……」

勝ったも負けたもないと思います。

そう言いたかったはずなのに言葉にならなかった。

ふらりと身体に力が入らなくなったと思った瞬間、急に目の前が真っ白になる。

「陽菜!」

薄れゆく意識の中、私の名前を呼んで抱きとめてくれる怜士の力強い腕の感触だけが鮮明に感じられた。