攻撃的な言い方だけれど、確かに私は部外者だし、ワークショップ中に勝手に子供たちと遊んでしまったのは行き過ぎだったと責められても仕方がない。

「ごめんなさい。ワークショップの邪魔をする気はないので、私はこれで」

素直に謝罪してこの場を去ろうとしているのに、尚も池田さんは私に食って掛かってくる。

「データ通り、保護者は受験対策教室への関心の方が明らかに高かった。私は負けてませんから」

キッと睨むように視線を向けてくる彼女は、自分の意見が通らないとヘソを曲げてしまう子供のような表情で、自分の仕事に対するプライドが滲んでいた。

怜士への想いとは別に、自身が推す受験対策教室の案を私が否定しているように感じて、こうして好戦的に接してくるのかもしれない。

私は彼女を刺激しないよう言葉に気をつけつつ、口を開いた。

「今日、私が一緒にいた男の子、ひらがなを書くプリントを見て『たのしくない』って言ってたんです」
「だから何? 楽しくなくたって、保護者が求めているのは『受験に勝てる教室』よ。ただ楽しく遊んでるだけじゃ意味がない」
「学ぶことが楽しいって思えないと、学習は習慣化しません。怜士は“勉強は楽しい”ということを学べる場所を作りたくて、幼児教育事業を始めたんです。それは入社よりもずっと前、小学生の頃からの彼の夢です」

そうだ。今日私がここに来たのは、怜士の夢の第一歩を見守るため。