怜士と気持ちが通じ合ってからは彼の部屋のベッドで眠っていたので、自分のベッドに横になるのは久しぶり。

そして、こんなふうに言いたいことの半分も言えず、ケンカにすらならないのは初めてだった。

学生の頃は、よくくだらないことで言い合いになった。

テストの点数や体力テストで競った時、卵焼きは甘い派かしょっぱい派か、修学旅行での自由行動の行き先を決める時も、私と怜士があれこれ言い合うのを、クラスメイトが『またやってる』と苦笑しながら見ていたのを思い出す。

『はい』
『なに?』
『こゆびぎゅってして。これでなかなおりね』
『これ、やくそくのときにするやつだぞ』
『いいの! ひなとれーじのなかなおりのおまじないなの!』

昔から気が強くて意地っ張りだった私は、ケンカしても上手に謝ることができなかった。

子供の頃はケンカするたびに小指を絡ませ、そのたびに『これ約束の時のやつだって』と怜士が笑ってくれて、いつの間にか仲直りすることができた。

まさに“仲直りのおまじない”。

習慣化していた“おまじない”は、私が初恋を自覚した頃には恥ずかしくて出来なくなってしまったけれど、大体はヒートアップして意地になった私が素直になれず、結局は怜士から仲直りのきっかけをつくってくれていたっけ。