怜士と気持ちを通じ合わせてからは、怒涛の日々だった。

互いの両親の思惑通り、私の二十五歳の誕生日に合わせて盛大なパーティーを開き、怜士が麻生グループの後継者であることと、彼を責任者に据え、新たに幼児教育事業へ参入することが発表された。

会場はあの日と同じホテル『アナスタシア』の大宴会場。

麻生グループと霧崎商事の関係者、さらに両社の取引先と、錚々たる面々に挨拶をして回るのはかなり骨が折れた。

以前はこういったパーティーは気疲れしかしないと遠慮していたけど、怜士と結婚するからにはそうは言っていられない。

夫婦同伴が暗黙のルールになっている場もあり、苦手意識は捨てて頑張るしかない。

彼の隣でそう決意していると、パーティーも終盤に近付いた頃、急に照明が落とされ、私と怜士のふたりにスポットライトが当てられた。

突然のことに驚いてキョロキョロしていると、彼はバラの花束を抱え、私の前で片膝をついた。

「陽菜、誕生日おめでとう。これからも一生、陽菜のそばで祝わせてほしい」
「怜士……」
「結婚しよう」

予期せぬサプライズに涙腺が崩壊し、涙声で「よろしくお願いします」と返事をしたのが三月のこと。