とはいえ、ここでがっついては陽菜の信頼を勝ち得ることは出来ないし、怖がらせる恐れがある。

久しぶりに再会したホテルでの顔合わせの日、陽菜の許可なく触れて泣かせてしまったのは、俺にとって最大の失敗だった。

もう二度と同じ過ちを繰り返す訳にはいかない。

「恋人同士らしいルールを決めよう。まずはお互いの予定の共有。出張で家を空けるときは連絡するし、陽菜は夜遅くなるときは教えて欲しい。心配だから」
「ん、わかった」

軽いルールを伝えてみると、素直に頷いてくれる。

「あと、出来るだけ朝と夜の食事は一緒に食べたい」
「私、朝早いよ?」
「俺が早く起きれば済むことだろ? 夜も俺がどうしても遅くなる時以外は一緒に食べよう。買ってきてもいいし、当番制にして作るのも楽しそうだし」
「怜士、料理なんて出来るの?」
「悪魔のおにぎり作ってやったろ?」
「あれは料理に入りません!」

美味しかったけど、と笑ってくれる陽菜が可愛くて、ひとり分空いていた距離を詰めて座り直し、そっと陽菜を抱き寄せた。

「ちょっ、怜士?」
「それから、当然だけど他の男とのデートも禁止」

これが本当は一番に言いたかったことだとわからせるように強めに言うと、陽菜は俺を上目遣いに見上げてくる。