「麻生くんとなにかあったの?」
「ごふ……っ!」

唐突に怜士の名前を出され、思わず吹き出してしまった。

おしぼりで口元を抑えながら先輩を見ると、したり顔の彼女と目が合った。

「霧崎さん、案外わかりやすい人なのね。学生時代、もっと仲良くお話していればよかったわ」
「高嶺の花だった彩佳先輩となんて、恐れ多くて……」

それに、怜士の彼女だった彩佳先輩と仲良くだなんて、当時の私には絶対に出来なかったと思う。

「それで? 麻生くんに告白でもされた?」
「先輩、お見通し過ぎて怖いです……」
「そう思うなら、もう観念して全部しゃべっちゃいなさい」

促されるままに、私は食事を進めながら、怜士に言われたことを順序立てて話す。

人に喋ることで客観的に話の全体像を把握し直して、自分の頭の中を整理したかった。

怜士に子供の頃から好きだったと告白されたこと。

政略結婚の話を聞いた時に父が紛らわしい話し方をしたせいで、私が結婚までに他の男性と遊びたいと話していると怜士が勘違いをしていたらしいこと。

そして、それが許せなくて私に当てつけるように他の女の子とデートしていたのだと、聞いた話をすべて包み隠さず話していった。