心臓が冷たい氷に触れた気がした。

ー 今、何かが聞こえた。

私の足はいつの間にか、その場から動かなくなっていた。





「ねえ、あそぼ」





聞き間違いじゃなかった。

凛が語ってくれた話が唐突に蘇った。

ー そう、血まみれの女の子のことを。

嘘だと思っていた。凛がしてくる話はいつも怖いが、作り話だと思っていた。だって、実際作り話だったから。

ありえないと思っていた。現実に起こるはずがないと思っていたから.

なのにこれはどういうことだろう。ありえないことが私の身に起こっているのは確実で、だからこそ信じられない。





「ねえ、あそぼ」





三度目の声。これ以上は無理だった。私は鉛のように重くなった足を動かして、とにかく走った。

はあ、はあと自分の息遣いだけが聞こえる。夢中で走っていたからだろうか。周りの声が一切聞こえない。