雪のとなりに、春。

思い出しても腹が立つ。

ふざけるな、ふざけるな。

自分でも驚くくらい強い言葉が次々と浮かんできては、膨れ上がっていく。
激しい波のように全身に広がるのを抑えることができないのは、初めての感覚。

そのまま、小日向花暖に対して強い言葉を浴びせてしまった。

昼休みの奈冷の態度で、あの子は本当は何も悪くないこともわかってしまった。
余計に自分が情けなくて苦しくなって、放課後に小日向花暖の元へ向かった。

結局、素直になれず冷たく当たってしまったのだけど。

自分の気持ちすらコントロールできないなんて、医者を目指す者として最低だ。


『カナメ、お兄チャンは』

「いいから、お兄ちゃんは自分のするべきことに集中してよ」


わたしの好きな人に迷惑をかけるような兄じゃなかったはずなのに。
子供の頃だって、よく奈冷と仲よさそうに遊んでいたのに。


今度こそ自分の感情をコントロールしようと、大きく深呼吸。


「……それじゃあ、お兄ちゃんなら心配ないと思うけど受験勉強とか頑張ってね」


怒りを抑えただけでなく、激励の言葉をかけることができた。
上出来だ。
そのまま通話終了ボタンをタップしようと耳から離した時。


『父さん、家に帰ってる？』

「……え？」


もう一度耳にスマホを押し当てた。
お父さん？　どうして急にお父さんの話を？