雪のとなりに、春。

本当はバカと言いたかった。
でも雪杜くんはバカじゃない。なのであんなおかしな言い方になってしまった。
悔しい、悪口だってまともに出てこない。

後ろから雪杜くんが追いかけてくるけど、気にせず走る。

雪杜くんはいつも正しい。
いつも間違ってない。

私と違って人の顔色や意見を気にすることなく、自分は自分だと思って行動できるし。

正しいよ。
嬉しいよ。

でも、このままだと私は一生雪杜くんという存在に甘えていくことになってしまう。

そんなのだめだ。

私が雪杜くんの足かせになるなんてそんなの、いやだ。


「先輩、待って」


結構全力で走ったはずなのに、もう追いつかれて腕をつかまれた。
雪杜くんは足も速いらしい。


「何か気に障ったなら、謝るから」

「……っ」

「天才人間でも、話してくれないとわからないことだってあるよ」


ちょっと気にしてる言い方だ。

精一杯の不機嫌を伝えるために、あからさまに口をとがらせたまま雪杜くんを振り返る。
けれど、振り返った先で待っていた上目遣いにやられて、その口をきゅっと結んでしまった。


「……私、雪杜くんの優しさに甘えてばかりなのが嫌なの」

「それはさっきも聞いた。きちんとわかるように話して」


雪杜くんの口角がゆっくりと上がっていく。