雪のとなりに、春。

「花暖先輩」


覗き混んでくる優しい表情に、きゅっと苦しくなる。

目の前の好きな人も、被害者だ。


「先輩は優しいから、きっと今回解決したとして、これからも同じようなことで何度も悩むと思う」


額を合わせて雪杜くんはそっと目を閉じた。
つられて、私も目を閉じる。
代わりに雪杜くんの落ち着いた声がよりクリアになって、切ないくらいに鼓膜に響いた。


「その時は思い出して。俺のこと」


どこまでも優しい。
ゆっくり並べられる言葉も、撫でる手も、全部。


「俺は、先輩のそんな自己満足に救われた人間だから」

「……」


目を閉じていて見えないはずなのに、雪杜くんが微笑んでいるのが見える。

初めて会った日に見たくしゃっとした笑顔。
「笑えない」と言いながらも口角を上げる、意地悪な笑顔。
困ったように優しく浮かべている笑顔。

全部好きだよ。
でも、間違いなく君の笑顔が一番好きだよ。


「先輩のことは、俺が信じてあげる」


あたたかい言葉がトクトクと注がれていくみたいに、心が少しずつぽかぽかしてくる。

そうだった。

どこにでもあるありきたりな、なんてない言葉でも。
あなたからもらった言葉なら、それは一瞬で私の中の特別になる。