雪のとなりに、春。

「あのさ、もう高校3年のくせに学習もできないわけ? 家の中とか普通に危ないでしょ」

「う」


そんなこと言われたって、すっかり体に染みついてしまっているものは急には変えられないんだもの。
私の下敷きになりながら大きなため息をつかれると、やっぱりちょっとごめんとは思うケド。

あと、単純にゆめちゃんの惚気話を聞いたら余計にくっつきたくなっただけだもん。

床に手をついてむくりと上半身を起こせば、意外にも意地悪く笑みを浮かべている雪杜くんと目が合った。


「もういいの?」

「っ」


初めてのアングルから見る、挑発的な笑みの威力は絶大で、体温が急激に上がっていくのがわかる。


「あれだけ人とくっつきたがってたのに、今更照れるんだ?」

「あ、えっ……」


雪杜くんの、方こそ。
好きって、大好きって言えば照れて手の甲で口元隠すくせに。
急になんで、こんな……余裕そうな。


「わ、たし」


体温がまだ上がってる。
顔にはじんわり汗が滲んできて恥ずかしい。
せっかく頑張ってお化粧したのに。


「ゆ、雪杜くんと、キスしたい」

「……」


耳に心臓があるみたいだ。
鼓動が速く大きく鳴りすぎて、熱くて恥ずかしくて、くらくらしてきた。