雪のとなりに、春。

サーッと青ざめながら慌ててその人に駆け寄った。

近寄って初めて感じだけれど、背は高いのにすらりとした華奢な体格。
まるで棒のように長い脚が羨ましい。
その俺そうなほど細い身体に似合わない大きなリュックを背負っている。

なんというかこう……環くんの、女の人バージョンみたいだ。

白に近い銀髪の間から透き通るような淡い水色のビー玉みたいな瞳がゆらりと私をとらえる。

どきりとした。

黒いマスクをしていて顔全体は見えないけれど、すごくキレイな顔立ちだとすぐにわかった。


「私の方こそ、よそ見をしていてすみません。怪我はありませんか?」

「っ」


マスク越しに聞こえてきた声は低く落ち着いた男性のそれだった。
どちらにしても、憧れの眼差しで見てしまうのには変わらないんだけれども。


「わ、私は大丈夫です、本当にすみませんでした……」


深々と頭を下げるけど、「いやこちらこそ」と相手も頭を下げる。


「それじゃあ、私は急ぎますのでこれで」

「はい、あの……」

「キリがなくなってしまいますよ、それじゃあさようなら。キレイなお嬢さん」

「きっ……!?」


黒いマスクの男の人は、にこりと笑ってスーパーへ入って行ってしまった。
キレイな人から、キレイって言われちゃった……。

お化粧だって少しはできるようになったし、根本的なお肌のケアだって見直すようにしたし……私の魅力は意外にもアップしてるのかも!!

これは……雪杜くんと大接近できるチャンスなのでは!!

体に羽が生えたみたいに軽やかに走り出す。今なら空でも飛べちゃいそうだよ。
……いつかもこんなことがあったなあ。


「待っててね雪杜くん、今行くよー!!」