雪のとなりに、春。

「よか……よかった、よかったあ……っ」


ぼろぼろと目からこぼれる涙を乱暴に拭う。

そんな私をみて、雪杜くんは優しく頭を撫でてくれて、皐月さんはほっと小さく息を吐いた。


「っしゃあ……!!」


向こうの方で、あっくんの大きな声が廊下に響き渡った。

見れば、私と同じように男の人に抱きついていた。
多分あの人が、あっくんが話してくれていた「オリ」という人なんだろう。


少しして、患者さんが手術室から集中治療室へと運ばれたのを確認した私たちは、しばらく近くのラウンジで喜びに浸っていた。

あとからあっくんのお友達やゆめちゃんも駆けつけてくれて、みんなが目に涙を浮かべて喜んでいる。
その中で唯一、静かに笑みを浮かべている人と目が合った。


「およ?」


近くで見てやっと確信した。やっぱり私の知っている人だった。


「先日は、ありがとうございました!!」


ぺこりと頭を下げると、その人は「くふ」と笑ってピースしてくれた。
青のインナーカラーがやけにきらきらしている。

あの、お花屋さんでお世話になった店員さんだ。


「こちらこそ幸せのお裾分け、ありがとにゃ」


誰より喜んで、誰より泣いたっていいはずなのに。
優しく笑った店員さんの目に、やっぱり涙はなかった。