雪のとなりに、春。

「俺もオリのお母さんのお見舞いに来たことあるんだけど、やっぱり……具合悪そうで、さ。正直見てるのもしんどかった」

「…………」

「それなのにオリやオリの父さんはバカみたいにいつも通りで、それこそ漫才みたいなやりとりしてさ。俺、そういうの耐性ないから、泣きそうになって何回か病室出てたんだよね」


そこまで話して「あ、ここ」と、とある病室の前であっくんが立ち止まった。

個室だ。

ちらっと覗いてみるけれど、人がいる気配はない。
また視線をあっくんに戻そうとしたとき、一際目立つ青紫色に目がとまった。


「……あれ……って……」


カキツバタが飾られていた。
そういえば、これも雪杜くんのお母様が言っていたような……。

え、でも……まさか。


「オリはずっと、花束を買ってお見舞いに来てたんだって。知り合ったとき、やけに花に詳しいと思ったんだけど、なかなか理由は教えてくれなくて」

「…………」

「……こんなこと、カノちゃんに言っても仕方ないことだって分かってるけど」


寂しそうな声が、芯のある強い声になるから。
私はやっとカキツバタから視線を外して、まっすぐあっくんを見た。


「オリやオリの父さんはもちろん、俺もゆめちゃんも、周りの仲間も、今日の手術が最後の希望なんだ」


「助かって欲しいんだ」と最後まで言い切るより早く、あっくんの瞳が揺れる。

いろんな人が関わっている。

人と人のつながりは、輪は、こんなにも広い。

そしてその輪は私にも、私の周りの人たちにも繋がっている。