雪のとなりに、春。

「結局、彼氏くんのお家にいた?」

「な、もしかしてそれも環くんから!?」

「照れなくていいんだよカノちゃん?」


さっきのお返しだと言わんばかりにあからさまに悪い笑みを浮かべるから、ぷいっと反対方向を向いた。


「ほらほら機嫌なおして! カノちゃんはこれからどこに行くの?」

「むう……」


子どもみたいな純粋な笑顔に毒素を抜かれ、小さくため息をつく。
あっくんのピュアさにはこれから先一生勝てる日なんてこないんだろうな。


「総合病院だよ。そこに雪杜くん……わ、わたしのかれしがいるので……」

「あはは、照れて後半めっちゃ小声じゃ……って、総合病院? 一緒じゃん!!」

「え、あっくんも!?」


ばったり会っただけじゃなくて行き先も一緒。バスも一緒。
奇跡のような偶然に、私たちは両手を合わせてきゃっきゃと喜びを分かち合った。


「カノちゃんの彼氏、雪杜って名字なんだ?」

「え、うん……どうして?」

「いやほら、あそこの病院の内科の先生にもいるでしょ、雪杜って先生」


奏雨ちゃんと皐月さんのお父さんのことだ。
私は通ったことがないからわからないけど、やっぱり知ってる人は知ってるんだなあ。


「まさかカノちゃんの彼氏さんがあの雪杜先生の息子さんだったとは……」

「あ、あのあっくん、私のその、彼氏は、同じ名字だけど実はちがうの」

「え、そうなんだ?」



あっくんが環くんの家に行った時に奏雨ちゃんにも会ったようだったので、雪杜家について軽く説明する。

すると、あっくんは途中で何か納得したように顔の前で両手を合わせた。


「俺の親友のお母さんが入院してて、その担当医が雪杜先生なんだ。それで、どうやら海外で腕の立つ外科医が手術してくれることになったらしくて、その先生も『雪杜先生』なんだって」

「え!?」


じゃ、じゃあ、雪杜くんのお父様が帰国した理由って、今日の手術のためだったってこと!?

……そういえば雪杜くんのお母様が「ナツさんが執刀する患者さん」とかなんとか言っていたような……!?


「うわあぁぁあ……」


度重なる偶然に、集まったピースが次々と綺麗にはまっていくその様に、おかしな声が漏れた。

でも、だとしたら。

雪杜くんのお父様は、どうして病院に雪杜くんを呼んだんだろう……。