雪のとなりに、春。

「腫瘍は無事に摘出できました。術後の経過を見ながら今後は(はく)医師の元服薬コントロールを行っていきましょう」

最後に父さんが「もう大丈夫」と最後に一言付け加えれば、ぴくりと肩を震わせて。

それから深々と頭を下げた。


そこでやっと父さん達と目が合った。

父さんもおじさんも達成感に満ちたいい笑顔を浮かべている。


皐月はどうかわからないが、俺はこれが初めてだった。
父さんが「医者」として患者として向き合っている姿を見たのは。

本人に言ったら怒られるんだろうけれど、本当に医者だったんだという実感が今更湧いてきて。

1人の患者が救われた瞬間に、同じ空間にいられたこと。

間違いなく貴重な時間なんだと思う。


長い長い時間をかけてから、ゆっくりと頭を上げたシノさんは、ちらりと俺たちを見た。

それから、表情を変えずにこっちに向かって近寄ってくる。


「?」


思わず皐月を見れば、「わからない」と言うように首を傾げられる。

俺たちの前で足を止めた彼は、しっとりと濡れた睫毛を二度上下させてから「くふ」とこぼれるように笑った。


「ありがとうございました」


それから何故か俺たちにも頭を下げられる。


「え、いや、俺たちは何も……」

「いい医者になってください」


それだけ言って、色素の薄い瞳が答えを待つようにじっと見つめてくる。


「……はい」


皐月が返事をしたのを確認した彼は満足そうに頷いてからくるりと向きを変える。

未だに泣き崩れている男性の元へ向かってしまった。