雪のとなりに、春。

「……」

「スープも作ってやるからな?」


まだ何も言ってないのに、息を吸っただけで覆い被せるようにしてそんなことを言ってのける。

俺が野菜嫌いなこといちばん知ってるくせに。

家に来る度に、紙袋一杯にカップ麺入れて持ってきてくれてたのに。


……裏切り者。


キッチンの方へ戻っていく背中を目一杯にらみつけてやった。


「奈冷、それで、結局明後日病院に行くの?」

「……まあ」


医者になることは強要されていない。
それでも父さんが、病院に俺を呼ぶ理由がわからない。

それを確かめるためには、行こうと思っている。


「そっか」


奏雨はそれ以上何も言わなかったけれど、なんとなく彼女が今考えていることはわかる。

彼女から想いを告げられたとき、俺ははっきり「医者になる気はない」と伝えたから。


言葉には出さないだけで、きっと医者になって欲しいんだと思う。
そして、医者になろうとする俺の姿にただ惹かれただけだ。

俺と皐月以外の男子と絡んでこなかった奏雨は、その憧れを恋心と勘違いしたままここまで来てしまったんだ。

ここまで考えて、皐月に嫌われている理由のひとつとして腑に落ちる。
皐月風に言えば「その2はなくなった」ということなんだろう。

ちらっとキッチンでスープを作ってくれているタマキ先輩へ視線を移した。

……きっとあの人は、奏雨のことを分かってる。


図書室での一件でタマキ先輩が奏雨に興味を持っていることはすぐに分かった。もちろん最初は動揺したけれど。