雪のとなりに、春。

自由を知らないから、自由が難しいのに。


まだピンク色が残るナイフを受け取る。
これは拭き取らなくていいのかしらと、色相環を見るけど、やっぱり微笑まれるだけ。

なんの指示もくれないことにも、指示を待ってしまっている自分にも腹が立つ。

もういいわよ。
お望み通り、好きにやらせてもらうわ。


隣の水色が落とされた白の山に、ナイフを押しつける。
そっと離せば、陥没したところにピンク色が混ざって、透き通った海の中のような色ができあがる。

この色の混ざり方が気に入って、これ以上混ぜたくなくて、いっぺんにすくいとった。
ナイフに乗り切らない絵具がぼたりとボードの上に落ちるけど、知ったこっちゃない。


好きにしろと言ったのだ。
好きにさせてもらう。


けど、キャンバスに乗せるのが案外難しくて、結局こするようにして色を置いた。

海のような混ざり方が気に入っていたのに、と思っていたけれど、こすったおかげでピンクがより薄く広がってわたしの好みに混ざり合ってくれた。

それだけで、体温が上がったことを自覚する。
先ほどぼたりと落ちた水色をすくい上げて、またキャンバスに乗せた。


そして濃い青は、何度もナイフの面の傾きを変えながら白と混ぜる。
混ざりきっていない青から、混ざりきった水色。
綺麗なグラデーションに満足して、今度はうろこに見えるようにキャンバスに置いた。


「いいじゃん」


色相環の声で、わたしはハッとして改めてキャンバスを見つめた。

海なのか、雲なのか。

描かれているのは何なのか自分でも分からない。

それでも間違いなく高ぶっている。
色を混ぜて、乗せる。

その繰り返しが、こんなにも楽しいなんて。