雪のとなりに、春。

ピンクと、濃い青の絵の具も同じように落とせば、色相環がおもむろに握っていたナイフを渡してきた。


「……今度はなによ」

「混ぜて、ここに乗せて」

「な、あ、あなたが先にやってよ、こういうのは最低でも1回は見ないとさすがにできないわよ」


ええ~?と眉を下げて微笑む彼は、ナイフを左手に持ち直した。
そして、迷うことなくピンクの絵の具が落とされた白を上から押しつぶそうにしてナイフを入れる。

少し面を傾けて、右、左とスライドさせれば、白とピンクがほどよく混ざり合ったグラデーションができあがった。

完全に混ざり合わないうちにそれを優しくすくいとると、目の前のキャンバスに優しくこするようにして色を置く。

絶妙な力加減のおかげなのか、誰がやってもそうなるのかは分からない。

ただ、細い花びらが一枚描かれた。


「こんな感じ」


同じようにしてすくい上げ、花びらの隣にもう一枚。
円になるように繰り返せば、白とピンクのグラデーションが綺麗な花が咲いた。


「……綺麗」

「はい、奏雨の番」

「で、でもこんなに綺麗な花にできな……」

「花にする必要ないから。あとどうせ全部なくなるし」

「なっ、なくなるって、じゃあどうして描くのよ!?」

「まあまあ。とにかくやってみなって」


ああもう。そればかり。
根拠や簡単な理由すら教えてくれない。考える時間も与えてくれない。

好きにやってみて、と、そればかり。